#127: 社食、13日の金曜日、コーヒー

#127: 社食、13日の金曜日、コーヒー

おはようございます。今週はどんな一週間でしたか?

今週は引き続き次号のリリース準備を進めるかたわら、5月号の制作を開始しました。翻訳やインタビュー記事の手配などを進めているところです。定期刊行物あるあるですが、新しい号がリリースされる頃には次の制作物がスタートしていて、出来上がった新しい雑誌が手元に届く時には案外内容を覚えておらず(笑)、実は皆さんと同じように新鮮な気持ちで読むことができちゃったりします。2月のリリース、楽しみにしていてくださいね。

今週木曜に、最新号(22号)のパートナーである高性能コーヒーミルEtzingerを取り扱うBrewmaticのショールームイベントが福岡で開催されました。Brewmaticが取り扱う4つのブランド(SANREMO、Curtis、Etzinger、ELEKTRA)の機器や器具を自由に扱うことができる業界向けのイベントです。Standartは、イベントの企画、福岡県内外のコーヒープロフェッショナルたちへのお声がけや周知などのお手伝いをしてきました。福岡県内を中心に、佐賀、熊本、長崎からロースターやバリスタの皆さんが集まってくださり、休む暇もないほどイベントはとても盛況でした。新年のご挨拶が皆さんにできたのも嬉しかったですね!

現場の様子↓

  

 
 

皆さんご自身が働くお店などで使用している機器には精通しているものの、他のブランドのエスプレッソマシンや機材などを知る機会は案外少ないようで、勉強の場として思い思いに楽しまれているようでした。また、経営者の方たちは、卸先の方へのご提案などで機材の価格帯などを知るためや代理店との接点を作るための機会として参加されていました。

SCAJやCAFERES JAPANなど大きな展示会でこういった代理店企業の方々とお話する機会は多いのですが、ゆっくりと話せない、じっくりと機材を試す時間がない、そもそも限られた人しかそういった場に行けない、といった課題があり、特に地方都市ではなかなかこういった機会に恵まれなかったりします。機器や環境の整ったショールームがあり、地域のコーヒープロフェッショナルたちが気軽に訪れることができるような場所があると、新たな交流や繋がりが生まれ、より密度の高いコーヒーシーンが作られていくかもしれません。

業界向けのイベントはビジネス色が強いものが多いので、こういったリラックスした環境で、バリスタになりたての人からロースターや経営者までが気軽に参加できる、開けたイベントがもっといろんな場所で開催できるといいなと感じました。コーヒー関連企業やコーヒーショップの皆さん、何かご提案やこんなイベントやってほしい!などといったご希望ありましたら、ぜひお声がけください。

それでは今週も良い週末を。

編集長 Toshi

 

 

This Week in Coffee 
世界のコーヒーニュース

サウジコーヒーの年は続く

これまでニュースレターでも度々取り上げてきた、サウジアラビア王国のコーヒーシーン。文化省が2022年を「サウジコーヒーの年」に制定したほか、国内コーヒーの収穫量約8倍増を目指す10年規模の投資プロジェクトが発表されるなど、特に昨年は活発な動きが見られました。化石燃料からの脱却が世界中で叫ばれるなか、原油産出量世界第二位のサウジアラビアにとって、石油に依存しない新たな経済体制の構築は喫緊の課題。実はコーヒー産業は、そんな同国にとっての新たな“ブラックゴールド”と言えるのです。

サウジアラビアにおけるコーヒーの歴史は深く、同地域では長年瞑想や祈りの際に眠気覚ましとして愛飲されてきました。なおアラビア半島におけるコーヒー文化は、「寛容さの象徴」として2015年ユネスコ無形文化遺産にも登録されています。現在ではアルコールに代わる社会交流のツールとして、コーヒーは人々の社会生活の基盤として昼夜問わず親しまれておりそうした国内消費が今日のコーヒービジネス成長の原動力となっているのです。この文化的基盤とホスピタリティ業界における若手・女性の起業・就業支援が相まり、昨年同国のコーヒーブランド市場は18.5%の成長を記録。現在中東にあるコーヒーブランド店舗約8,800の内、40%以上が同国に集中していると報告されています

また同国の成長戦略におけるツーリズム産業拡大の一環として、現在国内全土で大規模な都市開発プロジェクトが進行中とのこと。これに伴い、人々の体験価値の創出を促すホスピタリティ産業、特にその中核を成すコーヒービジネスがさらなる成長を遂げると予想されています。生産から消費に至るまで、サウジアラビア王国のコーヒービジネス全体の動向に引き続き注目です。

 

気になるニュース

▷  世界最大級のテクノロジー展示会CES 2023で、植物性ミルク専用の抽出マシン「グロウアップ」が披露目。食材と水を準備すれば、3~4分で添加物や余分な糖質を含まない植物性ミルクの出来上がり。マシンは10種類の食材に対応しており、抽出後の食材は乾燥させて焼き菓子に入れることもできます。

▷ ビジネスSNSリンクトインのサンフランシスコオフィスでは、現在社食の65%以上のメニューがプラントベースになっているとのこと。ちなみにコーヒーのミルクは、オーツミルクがデフォルト。

▷ 今年からドイツでは一定規模以上のレストラン、カフェ、フードデリバリーサービスの全てで、リユーザブルカップ・トレイの使用が義務化されました。

▷ コーヒー業界の人、場所、カルチャーを紹介するドキュメンタリーシリーズ「コーヒー・ブレス」のパイロットエピソードがYouTubeで公開されました。記念すべき初回の舞台は、米国・ポートランド州。動画内ではコーヒーの基礎的な用語説明も網羅されており、誰でも楽しめるようになっています。

▷ 英国で警官が保険未加入の疑いがある車両を止めたところ、ドライバーはなぜかコーヒーカップを持って近くのお店に逃走。カップの中からはコカイン20袋が見つかり逮捕となりました。ちなみに、事件当日は13日の金曜日でした。

物足りないあなたへ

ブルートーカイコーヒーロースターズが世界展開に向けて約38億円の資金を調達。スターバックスがフードデリバリーサービス「ドアダッシュ」との連携を米国全土へ拡大スウェーデンのセブンイレブンが、コーヒーカップを含むパッケージデザインのリニューアルを発表ました。

 

 

What We're Drinking
今週のコーヒー

 

SAFARI COFFEE ROASTER 大分地図

初めて飲んだスペシャルティコーヒーがフルーツと感じた、あの感動と驚きをもっと沢山の人に。 その思いで"2016年6月に南大分にて、自家焙煎コーヒーショップ「サファリコーヒーロースター」を設立。 コーヒー豆は生産国、生産地、生産処理方法などの履歴がわかる「スペシャルティコーヒー」を使用し店内で焙煎 生豆の仕入れから焙煎、抽出、提供までを一貫して手掛けるコーヒーロースターです。 焙煎機はドイツ製のオールドプロバットを使用、蓄熱性の高さと焙煎機特有の個性で コーヒー豆の個性を最大限に引き出す焙煎を目標に、風味豊かなフレーバーと甘さ、透明感のあるコーヒーをお客様にお伝えします。

 

生産者 シーラコーヒーウォッシングステーション近隣の農家

生産地域ルワンダ 北部県 ニャビフ郡(地図

品種ブルボン

精製方法ウォッシュト

テイスティングノート
青リンゴ、柑橘、ライム、緑茶、長い甘い余韻

編集長のコメント:

お湯を注ぐと、柑橘系の皮を彷彿とさせる香りがふわりふわりと辺りを包みます。どことなく香りの中に、朝露で濡れた果実をもぐときのような、みずみずしく、草木の香りと果実独特の甘さのようなニュアンスを感じます。早速一口すすってみると、「ぼんっ」と目の前に小さな爆発が起こってモクモクと煙が出たかと思うと、煙の中から蜜柑がゴロゴロ出てきました。甘んまいやつ。あぁ、これこれ、ルワンダはこうでなくっちゃ。そして間髪入れずに綺麗な飲み口でガツンとくるブラックティーのフレーバーが広がります。「え、砂糖入ってないんですよね? なんでこの紅茶こんなに甘いんですか?」と、そもそもコーヒーなのに、もちろん砂糖も入ってないのに、そんな質問をしちゃいそうなくらい強みのある甘さと紅茶感を覚えます。紅茶を飲んだ後の微かで心地よい渋みのニュアンスも。そして口に残るほんのりスパイスや黒糖のようなフレーバーは、コーラの飴を舐め終わった後のようです。温度が下がると、レモンのようなキレのある酸や桃のような華やかでジューシーな味わいも感じました。香りから味わいまで、これぞルワンダと思わせてくれる素晴らしいコーヒーでした。ごちそうさまでした。飲んでみたい方はこちらから

 


What's New in the Community?
Standart Communityで起きていること

 

今週のStandart Communityでは、エチオピア産コーヒー専門商社であるランスシーガル株式会社の二宮さんが、エチオピアでの現地視察の様子を共有してくださいました。エチオピアのコーヒー価格についてやカッピングの感想など、もっと詳しくお話を伺いたい話題ばかり。二宮さんのご厚意で、ニュースレター購読者の方々にも写真の一部をおすそ分け!

 

※Standart Japan​定期購読者の皆さんにはCommunityへの招待状をメールでお送りしています。まだの方はぜひご参加ください!

 

Inspiration
おすすめの本、映画、音楽、アート

Alfie The Odd Job Boy

たまに「この人、映画に出てきそうだな」と感じる人と出会うことがあります。見た目や特別な才能がどうという話ではなく、その人が放つオーラや言葉からそう"感じさせられる"とでもいいましょうか。

このドキュメンタリーを作った監督も、きっと主人公アルフィーにそんな雰囲気を感じとったのだと思います。イングランド北西部のクリザーローという町に住むアルフィーは、高校を中退後、仕事を転々としましたが誰かの下で働くこと自体に馴染めず、最終的に17歳でタンデムバイクとトレーラーを使った便利屋を立ち上げました。不要品回収や、清掃や管工事、配送業など、地元の人々に頼られながら日々の生活を営むアルフィー。フィクションのキャラクターかと思えるほどまっすぐな心を持つ彼は、公園の銅像が汚れていれば誰に言われずとも掃除し、落書きがあれば消し、道に穴が空いていればスプレーで印を残して注意を促します。

複数の精神疾患を抱え、決して裕福とは言えない生活を送りながらも自らや社会を悲観することなく、ユーモアを持って生き続ける彼の姿勢からは、どんな英雄譚に勝るとも劣らないくらい勇気をもらえます。

 

Brewing with…
あの人のコーヒーレシピ 

 

百崎 佑 aka MOMO🍑 

横浜生まれ・横浜育ちのハマっこ。 高校時代にコーヒーの奥深さとバリスタ方の心暖かい接客に惚れ込み、 高校卒業後、コーヒー・カフェの専門学校へ。 在学中に「もっと自分の好きなスペシャルティコーヒーを地元横浜の人に知って欲しい!」という思い、2019年に『YOKOHAMA COFFEE FESTIVAL』を立ち上げる。 昨年の2022年には2回目のイベントを開催。 大手カフェチェーンやコーヒースタンドで働いた後、現在は渋谷区富ヶ谷の「THE COFFEESHOPでバリスタとして働きながらYCFの企画・運営や個人ブランド「PEACH COFFEE」として活動中。

5 questions

今気になっている問いは?

「技術が進歩している今 "バリスタとしての意義”とは何か。」

バリスタとしてコーヒーの知識や技術はもちろん大事ですが、マシンなどの技術が年々進化していくこの先、改めて”バリスタとしての意義”とは何か。という事を考えさせられます。コーヒーは色んな方の日常に近い場所・存在だと思います。誰かの日常が少しでもコーヒーを通して明るく出来るように、「この人に淹れて貰えて良かった!」と思って頂けるように、日々来て下さるお客様に寄り添った自分らしい接客を心がけていきたいですね。

お気に入りの場所は?

「温泉」
日本人に生まれて良かったと思える文化の一つです。疲れた後に温泉にゆっくり浸かってから、お風呂あがりにハイボールやビールを飲むのが最高に好きです!

譲れないこだわりは?

「Jameson」
毎日家に帰って飲むのがJamesonのハイボール。僕のルーティンでありこだわりの一つです。 「明日も頑張ろう!」と思える元気の源かもしれません(笑) オススメのお酒(ウイスキーに関わらず)などあればぜひ教えて下さい。

今誰と一緒にコーヒーを飲みたい?

「家族」
やはり一番身近な存在の家族に「美味しい」と自分が淹れたコーヒーを飲んで貰えるのが一番嬉しいですね。私の家族もそうですが「私は酸味のあるコーヒーは苦手」と最初は飲んでくれなかったのですが今ではすっかり浅煎りのコーヒーも「美味しい」と飲んでくれるようになりました。もちろん好みはありますが、そんなきっかけをいろんな形で自分なりに表現していければといいなと思います。

最近のやらかしエピソードを教えてください。

「人生初の大やけど」
エアロプレスでコーヒーを淹れている時に手にお湯がかかってしまい、年末に左手に大やけどを負ってしまいました…。段々と痛みと水ぶくれがひどくなりかなり痛かったです。バリスタは手も商売道具の一つなので気をつけたいですね。昨年の年末に厄を落としきったと思い、心機一転前向きに2023年を過ごしていきたいです!

 

Fancy a refill?
編集後記 

今週のInspirationでご紹介した『Alfie』は、イギリス北西部が舞台ということもあり英語のアクセントがかなり強く、字幕無しではきちんと内容を把握できないほどでした。再生し始めてすぐにそれに気づき、字幕をONするとふと、学生時代に英語を意識的に勉強していたときの「字幕無しで映画を観られるようになりたい」という目標が蘇ってきました。

当時は字幕無しで観ることがかっこいいと思っていたので、全く内容が分からないまま観終えてしまった作品も1本や2本ではありません。思い出すだけで恥ずかしいですが、ちゃんと理解するために字幕をONにした自分に成長を感じ、少しだけ安心しました。

Atsushi

 


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今週の The Weekend Brew は Standart Japan 第22号スポンサーのCROWD ROASTER、パートナーの Victoria Arduino x トーエイ工業TYPICAETZINGER x BREWMATICPhilocoffeaのサポートでお届けしました。

LOVE & COFFEE✌️
Standart Japan
(執筆・編集:Takaya & Atsushi)