#96: ワトルシード、テムズ川、コーヒー

#96: ワトルシード、テムズ川、コーヒー

おはようございます。今週はどんな一週間でしたか?

今週中頃にスロバキアから帰ってきました。先週のニュースレターで少しお話ししたように、今回の旅の主な目的はStandartのCEOマイケル・モルカンの結婚式でした。

実は先週のニュースレターが配信されたその瞬間もまだ、スロバキアの山奥で行われていた結婚式は続いていて(現地は日曜の午前1時)、ディスコやレイトナイトビュッフェ、パリンカと呼ばれる伝統的な蒸留酒、式にも参列していた夫婦が経営するチェコのロースターIndustra Coffeeが焙煎した美味しいペルーのコーヒーなどを代わる代わる楽しみながら、お祭りムードはさらにボルテージをあげて行ったのでした。日本の結婚式のスタイルとはかけ離れた文化にただただ圧倒されるばかり。

中でも驚いたのは、70歳以上にもなるご高齢のグランパ・グランマたちも、朝方までダンスやお酒、食事を楽しんでいたこと。寝ずに朝食の集まりに参加していた強者も。子供たちも夜中まで大人に混じって楽しんでいて、軽いカルチャーショックを受けたのはいうまでもありません。

そんな楽しい宴も朝日と共に終わりを告げ、皆軽く仮眠を取った後に朝食を取り、帰路につきました。マイケルやStandartのチームのみんなとはここでお別れ。固い握手とハグを交わし、次回の再開を約束しました。Standart Japanチームはその足でスロバキアの首都ブラティスラバに移動し、溜まった仕事をこなしながら現地のコーヒーショップや観光を楽しみつつ、最後の日はテイクアウトピザと引き出物のワインとNetflixで締めくくったのでした。

ちなみに、ブラティスラバの街では電動キックボードのbolt移動していたのですが、街中のいろんな場所に置いてあってアプリをかざすだけで使用可能で、これがとても便利。日本でもmovicleLUUPといった同様の電動キックボードのシェアリングサービスが実験的に運用されているそうで、気軽に使えるようになると街中の観光が違った風景になりそうです

今週のStandart Japanは、時差ぼけと戦いながら、次号の制作の追い込みに取り掛かっています。

それでは今週も良い週末を。

編集長 Toshi



 

 

This Week in Coffee 
世界のコーヒーニュース

青い鳥が羽ばたく先

「スペシャルティコーヒーをもっと楽しく、アプローチしやすく」をビジョンに掲げるコーヒーブランドCouplet CoffeeD2Cファッションブランドを彷彿とさせるウェブサイトやグッズ、カラフルなパッケージなど、既存のスペシャルティ企業とは一線を画すブランディングで、コーヒーファン層の拡大を目指す同社の創業には、ソーシャルメディアを通して構築したコミュニティが大きな鍵を握っていました。

大学で計算言語学を専攻していたCouplet Coffee創業者のゲフェン・スコルニックさんは、在学中に数々のテック企業でインターンシップを経験。さらに、移民の両親の元で育ったレズビアンの彼女は、現在も関わっているベンチャーキャピタルでの仕事を通して、女性やセクシュアルマイノリティ、有色人種の創業者支援を行っています。10代の頃から大のコーヒー好きだったスコルニックさんは、専門性の高まりとともに「閉じて」いっているように感じられたスペシャルティコーヒー業界に疑問を持ち、2020年、パンデミックを機にD2CフォーカスのプロジェクトとしてCouplet Coffeeをスタート。コーヒー業界での就業経験のない彼女が頼ったのはTwitterでした。テック業界での人脈を広げるために活用していたTwitterを使って、コーヒー業界の人たちに次々とアプローチ。焙煎や仕入などについてゼロから知識を積み上げていき、2021年に正式にCouplet Coffeeを設立。初めての資金調達もTwitterのDMがきっかけだったといいます。

とあるインタビューで、プロを演じずに自らの無知をさらけだし、「ひたすら初歩的な質問をしまくる」ことが事業立ち上げや、コーヒーという新しい世界においてネットワークを築くのに欠かせなかったと語る彼女。限定数のグッズドロップやTwitterTikTokでのパーソナルな発信を含め、新しいアイディアを積極的に取り入れながら楽しいコーヒーを体現する姿に今後も注目です。

 

気になるニュース

▷ ロシア軍のウクライナ進行を受け、スターバックスがロシア国内からのビジネス撤退を発表離職を余儀なくされるロシア人従業員約2,000人に対しては、再就職までの支援として半年間給与が支給されます。

▷ 英国バリスタチャンピオンのタルロ氏率いる飲料系スタートアップ「Headstand」が、コーヒーリーフを用いた炭酸飲料を発売。農家の収益アップを図るべく、原料となるコーヒーリーフはスペシャルティコーヒーと同価格で取引されるそうです。

▷ マクドナルドが、豪州でアメリカーノならぬ「オーストラリアー」を期間限定発売。ワトルシード(アカシアの種)とチャイのフレーバー漂う新たなメニューは、果たして豪州の国民的ドリンクになり得るのでしょうか?

▷ 漏水被害による店舗全壊によって長期休業中の逗子・BREATHER COFFEE。現在は店舗復興に向けて、クラウドファンディングや各地への募金箱の設置を予定しています。支援内容や連絡先についてはこちらの投稿から。

▷ アウトドアシーンにも嬉しい、持ち運びに適したポータブルエスプレッソマシン。お馴染みジェームズ・ホフマン先生が、実際に4つのマシンをロンドン市内に持ち出した実演レポを公開ちなみに舞台はテムズ川を走るボートの上から始まります。

物足りないあなたへ

コーヒーを1日あたり1.5~3.5杯飲む人は、コーヒーを飲まない人と比べて死亡リスクが低い可能性が。シカゴ発Inteligentia Coffeeの従業員が労組結成に向けて始動2021年日本国内のフェアトレード市場が前年対比で約20%長。

 

 

What We're Drinking
今週のコーヒー

 


IMOM COFFEE ROASTERS 愛知(地図

愛知県長久手市(この秋ジブリパークがオープンする街)にあるロースター&カフェです。倉庫をリノベーションした広々とした空間では、自家焙煎のスペシャルティコーヒーや、姉妹店のパーラーイムオムで作られる焼菓子をお楽しみいただけます。コーヒーを通じて繋がる人と人との接点を大切に、その先にある豊かな暮らしを目指しています。

 

農園ラス・ペルリタス

生産地域コロンビア ナリーニョ県エル・タブロン・デ・ゴメス(地図

品種カトゥーラ

精製方法
ハニー

テイスティングノート
アメリカンチェリー、キウイ、ストーンフルーツ

編集長のコメント:

コロンビアのナリーニョ県のコーヒーは、ニュースレター初登場でした。豆を挽くとと力強い骨太な香りがあり、これはもしかしたらカトゥーラかな?と思いながらバッグに添えられた情報に目をやると"カトゥーラ"の文字。「おおぉぉ」と自分の勘に半ば驚きながら、挽いた豆に顔を近づけその濃縮されたような特徴的な香りにしばらく鼻を埋めるように嗅ぎました。ゆらゆらとゆらめく液体にスプーンを落とし掬い上げ、一口啜るとまず広がったのは鮮やかな酸味。ほんの少しレモンのようでもあり、やや若めのゴールデンキウイのような甘さを伴う嫌味のない爽やかさ。新鮮なキュウリがさっと頭をよぎった後、つるりとした食感とメロンのようなニュアンスも。ピーナッツを思わせるフレーバーを感じた後、ジューシーなグレープフルーツのような果実感とキレのある後口がありました。なんとも複雑な味で、コクのあるコーヒーだなぁとしみじみおいしさを噛み締めたのでした。ごちそうさまでした!


Artists in Residence
Standartを彩るアーティストたち

アーティスト: 

ジアファン・ワン  BehanceInstagram

プロフィール:

パリ在住のイラストレーター。白昼夢に映る優しくも力強い欲望の川のような、目に見えない愛の物語や秘密の空想を描く。強いコントラスト、繊細なライン、輝度勾配を駆使し、しっとりとした感情を表現する。

最新の掲載記事:

Standart Japan 第20号 『コーヒーいっぱいのインスピレーション』

 

Inspiration
おすすめの本、映画、音楽、アート

Journal du Thé

フランス人アーティストのジョアンナ・タガダとドイツ人のグラフィックデザイナー、ティルマン S. ウェンデルシュタインによる、現代の茶文化を探求する雑誌『Journal du Thé (ジャーナルデュテ)』。そのChapter3では、マオリ族の聖なる植物「カワカワ」、1920年代のバウハウスとインドの関係、ポストコロニアルのジンバブエにおける紅茶(ティイタイム)の意味、塩川いづみによる漫画など、テーマである「現代のお茶を取り囲む空間」をありとあらゆる角度から掘り下げます。また本号からは、日本限定で日本語訳の冊子が付属されており、ボリューム満点ながら手に取りやすい仕様に仕上がっています。

この出版シリーズは、ジョアンナ・タガダが立ち上げたディープエコロジーをめぐる文化出版活動「Poetic Postel Press」の一環に位置付けられ、その活動領域はアート、出版、ガーデニング、テキスタイルと多岐に渡ります。今年4月には、気候変動とカルチャーをテーマとする雑誌『Atmos』との共同企画で、Spotifyのプレイリストインタビューも公開中。こちらも気になる方は是非チェックを。



Brewing with…
あの人のコーヒーレシピ 

 

陳 姿樺 チン シハオア aka Ryoko(涼子)

台湾出身、沖縄に在住。バリスタ兼コーヒー豆のバイヤーとして台湾にある「Drink Like A Local」という名前のカフェを経営して、日台コーヒーに関する交流を行っています。

5 questions

今気になっている問いは?

コーヒー好きになった皆さんは何のきっかけでコーヒーの世界に飛び込みましたか? 日本と台湾はお茶文化なので、異なる文化であるコーヒーの世界に、皆さんが興味を持ったきっかけは非常に興味深いです。

お気に入りの場所は?

メキシコです。メキシコの町とコーヒーショップに行きたいです。メキシコの豆は結構面白いと思っています。どんな文化や風情のところから、こんな特殊なコーヒー豆が出来上がるのか知りたいです。

譲れないこだわりは?

うちのワンちゃんとの海時間です。ビーチで一緒に海を眺めながら、コーヒーを飲む休み時間は自分の気分転換もできるし、ワンちゃんも嬉しいし、かなりチャージできます。どんな大変な仕事やチャレンジも頑張れます。

今誰と一緒にコーヒーを飲みたい?

沖縄にあるコーヒーショップ豆ポレポレの焙煎士、仲村良行さんと一緒にコーヒーを飲みたいです。(彼が飲んだ後コメントを楽しみをしています。)

最近、何に感動した?

16年ぶり母校(立命館アジア太平洋大学)に帰りました。山に囲まれて綺麗な眺めがあるキャンパス、親切なスタップや後輩達ですごく癒されました。こんな素晴らしいところで4年間大学生活を過ごした青春は本当にラッキーだと思って感動しました。

 

Fancy a refill?
編集後記 

先日『日本人はなぜキツネにだまされなくなったのか』を読了。1965年を境に、日本全国からキツネに騙される話がパッタリと消える。その謎を解き明かす中で、求めていた問いが「なぜキツネにだまされなくなったのか」から、「なぜキツネにだまされることができなくなったのか」へと昇華される過程が非常に興味深かった。発展を前提とする社会にこそ、常に「何かができなくなる」という視点を持つことの重要性に改めて気付かされる。

昨今、日常の中で「待つ」機会が少なくなったと思う。電車を逃しても数分後には次の電車がやってくる。オンラインで買い物しても、お届け日は注文から大抵2〜3日以内。何もしない時間が生まれると、その時間を埋めようと"何か"しようと試みる。経済が常に社会の「速さ」によって支えられているならば、発展とともに人々は「待つ」ことができなくなっているのだろうか。そんなことを考えながら、先日鷲田清一著『「待つ」ということ』が届いた。「いつしか失った「待つ」ことの意味を問いかける」、帯の一文に既に心惹かれる。週末、本を開くのが待ちきれない。

Takaya

 


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今週の The Weekend Brew は Standart Japan 第20号スポンサーのFAEMA、パートナーの Victoria Arduino x トーエイ工業TYPICAProbatセラード珈琲MiiRのサポートでお届けしました。

LOVE & COFFEE✌️
Standart Japan
(執筆・編集:Takaya & Atsushi)