#24: 心からの思い

#24: 心からの思い

おはようございます。今週はどんな一週間でしたか?

怒涛の2020年ももうすぐ終わり。7月から始まったWeekend Brewも今日で24回目の配信となり、これが今年お届けする最後のニュースレターです。Weekend Brewが日曜の新しい習慣になったという声を聞くたびに、Standart Japanチーム一同、心から嬉しく感じています。年明けは1/10より配信開始です!

「そうか〜、来週から日曜が暇になっちゃうな」と思った方、朗報です。この年末年始はあまり外出せずに家で過ごす方も多いと思い、Standart Japanのバックナンバーの送料無料キャンペーンを12/27まで開催しています。28日が最終発送日となりますので、前から気になっていたバックナンバーがあれば、この機会にゲットしてみてください。チェックアウト時に「HAPPYREADING」のクーポンコードを入力するだけ👌

また、バックナンバー繋がりでお伝えすると、リデザイン後の第一弾となったStandart Japan 13号が在庫切れとなりました。Standartは増刷を行っていないため、お取扱店の在庫がなくなりしだい完売となります。すでに完売した1、2号は某オークションサイトで取引されているとの噂も……。気になっていた方はこの機会に、お近くのお取扱店を(年末年始用のコーヒー豆・書籍の確保も兼ねて)訪れてみてくださいね。

そして最後に、みなさんの応援のおかげで、StandartがSprudge Award 2020のファイナリストに選ばれました! 最終投票期間は1/3まで。4年連続となるBest Magazine Award獲得を目指して、またみなさんのお力添えをどうぞよろしくお願いします! 投票はこちらから。メールアドレスを入力して、各部門からひとつ投票先を選ぶだけの簡単設計です(5分くらいで終わります)。Standartは「Best Coffee Magazine/Book」部門にノミネートされています。

2020年もたくさんの方々からご支援いただき、本当にありがとうございます。2021年もコーヒーカルチャーの魅力をどんどん伝えていきます。

それではみなさん、メリークリスマス&良いお年を。

編集長 Toshi

 

 

This Week in Coffee 
世界のコーヒーニュース

危機感の時差

オーストラリア政府は先月、コーヒーカプセルの国内リサイクル化を目指すコンソーシアムに$2000万(約15.7億円)規模のファンドを通じて助成金を交付すると発表。コーヒーカプセル市場は近年成長傾向にある一方、梱包材の複雑性を背景に使用後はその大部分が埋め立て処理されていたことから、例えば独ハンブルク市では官庁施設におけるコーヒーカプセルの購入が禁止されています。豪州の同プロジェクトは環境財団Planet Arkが中心となって、国内市場全てのコーヒーカプセルを対象に埋め立て処理の現状改善とリサイクル率向上を目指します。
 
地球規模で取り組まなければならない気候危機という問題を前に、産官一体となった取り組みの必要性が高まっています。近年の研究によると、気温上昇に強いとされていたロブスタ種の耐暑性が予想よりも低く、今日まで見積もられていたコーヒー生産高が今後大幅に減少するとの懸念も。また気候危機は世界2000万人ものコーヒー農家とその家族の経済危機をもたらす可能性があることから、コーヒー業界としても気候危機への対策と品質向上を両立できる施策が早急に求められています。
 
農家が危機に直面する中、消費国では「普通にコーヒーが飲めている」現実によってコーヒー危機が現実味を帯びないことも否定できません。しかし気候危機は生産高とクオリティの問題に直結し、最終的に 「価格の高騰」と「フレーバーの喪失」という形で消費国で表面化します。最後にカップに残るのが、そんな「現実味」のフレーバーでないためにも、消費者を含めた業界全体が一体となって、改善に向けた大きな流れを生み出していかなければなりません。

 

No Standard

ここ最近、一部のコーヒーラバーの間で物議を醸している、ある研究結果があります。その内容とは「コーヒーの大量消費は純粋な楽しみ(Liking)よりも、カフェインへの中毒性(Wanting)との相関関係の方が高い」というもの。この研究では中毒のインセンティブ感作理論(IST)に基づき、コーヒーの消費を「中毒」と「純粋な楽しみ」の2つの独立プロセスに分類。その後、合計56人の被験者を対象に潜在的連合テスト(IAT)を行ったところ、コーヒーのヘビードリンカーの方が中毒との相関関係が高いという結果が出たのだそう。
 
一方でこの結果については議論も絶えない様子。2017年の研究ではインセンティブ感作理論はコーヒー飲用者にはあてはまらないとされ、こちらの記事では特に単発のIATの精度はアテにならないという声も。しかしここで注目したいのは、研究結果の真偽以前に、この記事を読む前から頭にある「中毒性があるかも」もしくは「中毒性はないだろう」という考えが、「確証バイアス」に繋がるかもしれない、という視点です。本誌12号『バイアスをすくい取れ』にもあるように、カッピングにおいても個人の経験や好みに基づくスコアリングが問題視されており、カッパーは常に自らの内に潜む偏見と向き合う意識が必要だとされています。
 
まだコーヒーを知らない(確証バイアスの少ない)人たちの眼に、今日の多様性溢れるコーヒーカルチャーはどのように映るのでしょうか。固定的なイメージを持たずに、多様なフレーバーと人々が交差するコーヒーという世界に足を踏み入れる人の姿を想像するだけで、その無限の可能性に思わず笑みがこぼれてしまいます。一人ひとりが懐古主義やバイアスを他者に押し付けることなく、これからもコーヒーの自由な空間が育まれることを「心から」願っています。

 

その他の気になるニュース

▷ COVID-19の症状のひとつされる嗅覚障害の検査に世界中でコーヒーが使用されているとのこと。読者の皆さんも日々の”体調検査”を怠らず、安全第一に年末年始をお過ごしください。

▷ KINTOがSportifyで季節や日常のシチュエーションに合わせたプレイリストの配信を開始。そのうちの1つ「Healing time, just for you」のカバーイラストを担当したのが、本誌8号のフォトエッセーに登場したJohnna Slabyさん!なんとStandartがきっかけで生まれたコラボだそうで本当に嬉しいニュース。

▷ Brexit問題が続く英国では今月末に移行期間を終え「合意なき離脱」に達した場合のコーヒー市場の縮小化に不安の声が。生産国やEU諸国から物資を輸入する際にかかる関税によって、コストの上昇が予想されています。

▷ 人気ゲームWorld of Tanksと豪州ロースターのコラボコーヒーが販売。中身は第二次世界大戦時に豪州の歩兵大軍基地が置かれた東ティモール産コーヒーを使用しており、利益は全額豪州軍人遺族への支援を行うNPOへ寄付されます。


▷ 香川・多度津町の「絵になる」喫茶店がTwitter上で話題に。カウンターとキッチンの間にレトロな額縁を取り付けることで、まるで物語のような世界観を演出しながらもアクリル板の設置が可能とのこと。来店を考えている方は事前にTwitter等で情報確認を。

 

 

What We're Drinking
今週のコーヒー

foret coffee 
長野

大きな木の木陰にふらっと休みに行くような、そんな心地よい時間を長野県善光寺の麓でコーヒーと共に提供しているforet coffee。同じ豆でもローストプロファイル(焙煎度)によって味わいは大きく変化します。ゲストの好み、体調、気分によって焙煎度を選べるのも特徴。中煎りはコーヒー本来の果物の穏やかな酸を、深煎りはの香ばしく甘い余韻を楽しめます。

生産者
シフェラウ・バントラ
生産地域

エチオピア 南部諸民族州ゲデオ県ゲデブ (地図

品種
原生品種
精製方法
ナチュラル
テイスティングノート

中煎り:ブルーベリー、ストロベリー、ダージリン
深煎り:キャラメル、ベリー、チョコレート

 

Standartの感想:
同じエチオピアの豆の焙煎度違いを横並びでカッピング。中煎りと深煎りでまったくと言っていいほど異なる飲み物になっていました。中煎りは、驚くほどに強烈なブルーベリージャムの香りがして、少し温度が下がると蜂蜜レモンのようなニュアンスも。フレーバーはブルーベリーと煎茶とマイヤーレモンをミックスしたカクテルのよう。ダシみたいな感覚もあり力強さを感じます。深煎りは、焼き上がったトーストのような匂いの奥にプルーンが見え隠れ。一口すすると「パンっ」と広がる濃厚な甘さの後に、カカオ90%くらいのチョコのような心地よい苦みを感じ、口の中で甘さと苦さが行ったり来たり。口を閉じて鼻で息をするとブルーベリーを少し感じます。しばらく余韻に浸っていると、どこか懐かしい黒糖のような饅頭が頭に浮かびました。そういうフレーバーを感じたのか、ただ食べたくなっただけなのか、どっちなんでしょう? 当選者はどちらの豆も届きますよ:) それにしてもパッケージのイラストが可愛いすぎる。

 


Inspiration
おすすめの本、映画、音楽、アート

Bathroom House
関連記事

design studio NAOによる、東京の集合住宅の一室をリノベーションしたプロジェクト。オーナーの「日本が感じられる空間」というテーマに対して出した答えは、風呂を部屋の中心に置くということ。風呂場がリビングであり、ダイニングやキッチンでもあるという、日本を感じる空間と言いつつも日本文化の感覚では到底理解できない、かなりぶっとんだコンセプトです。水回りや湿気などが気になるし、お風呂にお湯ためるの時間かかりそうなんて実用性の疑問や不安が浮かびますが、そんなことは関係ないんです。欧州的視点から日本を感じる要素をこのスケール感で空間デザインに落とし込んでいること自体が素晴らしいし、その発想力に称賛しかありません。東京タワーを横目に、高層ビルを眺めながら入るお風呂は絶対気持ちいはず。時期に応じて民泊利用も視野に入れてデザインされているそうですよ。- Toshi

Valet Magazine
ウェブサイトInstagram

Standartの一部のメンバーが最近創刊したValet Magazine。クラシックなメンズファッションと文学がテーマのこの雑誌は、「He doesn’t want to be told what to wear, but to be shown how to decide for himself.(洗練された者は何を着るべきかではなく、自らの選択をより良いものにする方法を知りたいのだ)」とウェブサイトにあるとおり、300ページ近くを割いてさまざまな切り口からファッションとの向き合い方を表現する一方、具体的なアイテムや価格などは一切掲載されていません。また写真(すべてフィルムで撮影したもの)をふんだんに使い、光沢紙が用いられた前半とは打って変わって、後半はペーパーバックを思わせる粗い紙に文字がたっぷり掲載されており、物理的な雑誌というメディアの可能性を感じさせてくれます。同僚の贔屓目を差し引こうとしても、「さすが」という声が漏れ出てしまった一冊。ちなみに僕もソーシャルメディア用の写真撮影でちょこっとお手伝いしています。- Atsushi

 


Brewing with…
あの人のコーヒーレシピ 

井手 克哉

福岡のロースターでバリスタ、焙煎士として働く。地元長崎に帰省しカフェAnd Barissier(アンドバリシエ)をオープン。人との繋がりを活かしたお店でコーヒーのおいしさを広めていけるよう日々精進中。

セットアップ:

抽出器具:karita ウェーブ155
豆量:16g
湯量:250ml(出来上がり230ml)
挽き目:中細挽き(みるっこ 4)
抽出温度:88℃
抽出時間:2:30

手順:

  1. 1投目:25cc 〜40秒
  2. 2投目:75cc 〜1分10秒
  3. 3投目:150cc 〜1分30秒
  4. 4投目:200cc 〜2分
  5. 5投目:250cc 〜2分30秒

ポイント:

▷ ペーパーはリンスしておく
▷ 1投目はガスを抜き2投目でコーヒーの成分を出すイメージ

スイーツレシピ:
<材料>

  • フィンガービスケット(カステラやスポンジ生地でも可)
  • マスカルポーネ 125g
  • 生クリーム 100g
  • 砂糖 10g
  • エスプレッソ(or 濃く抽出したコーヒー)30cc★
  • 砂糖 20g★
  • ココアパウダー

<手順>

  1. ★を合わせてビスケットに染み込ませる
  2. 生クリームと砂糖を泡立てる7分立て
  3. マスカルポーネを柔らかくしておく
  4. ③に②を少しずつ入れ馴染ませながら合わせる
  5. ①をお皿に乗せ上にクリームを盛りココアパウダーとあればエスプレッソの粉をかけて出来上がり。

混ぜるだけの簡単なスイーツですが、コーヒーとの相性はバッチリです👌

一言:

当店ではお客様の声を聞いて抽出してます。 コーヒー専門店ではないですが、少しでもコーヒーという液体にフォーカスをあててもらえるようにお客様に好みを伺いそれに合わせて豆も抽出も少し変えています。

  

今週の Weekend Brew はいかがでしたか?

バックナンバーを含め、Weekend Brewの感想やコメントはぜひ #standartjapan のハッシュタグと共にシェアをお願いします! 質問はメールでお待ちしております。またお友達やご家族など、Weekend Brew を一緒に楽しんでもらえそうな方にこのメールを転送していただけると嬉しいです。

Standart JapanのウェブサイトInstagramFacebookもぜひチェックしてみてくださいね。

今週の Weekend Brew は Standart Japan 第14号スポンサーの Victoria Arduino x トーエイ工業、パートナーの MiiR JapanBarista Hustle JapanSucafina のサポートでお届けしました。

LOVE & COFFEE✌️
Standart Japan 

(執筆・編集:Takaya & Atsushi)