#124: ビーズ、ミステリー、コーヒー

#124: ビーズ、ミステリー、コーヒー

おはようございます。今週はどんな一週間でしたか?

クリスマスの朝に今年最後のThe Weekend Brewをお届けします。皆さん、クリスマスはどんなコーヒーを楽しんでいますか? 僕は今週のWhat We're Drinking でご紹介しているタリル珈琲さんのホンジュラスを飲んでいます。

今年も一年、ニュースレターを皆さんの毎週末のルーティーンに加えてくださって本当にありがとうございました! なかなか読まずに溜まってる〜という方は、お休み中の隙間時間にでもアーカイブやご自身のメールボックスに積まれているニュースレターを開いてもらえると嬉しいです。また、The Weekend Brewに関する皆さんのご感想やフィードバックなども、よければhello@standartmag.jpまでいただけると、チーム一同喜びます!

年末年始のStandart Japan は次号の校了Week。何度も読み込みながらテキストからデザインまで誌面をブラッシュアップしていきます。年内に終わらせられるといいなぁ(遠い目)次号も皆さんに面白いStandartをお届けしますのでお楽しみにしていてください。

年の瀬はゆっくり過ごされる方も多いと思います。27日中までのご注文であれば年内の発送になりますので、コーヒータイムのお供によければぜひ!もう読んだよという方は、コミュニティでご感想をシェアしてもらえると嬉しいです。また、ひつじ珈琲さんが最新号の「サステナビリティの種蒔き」をベースに、栃木県大田原市にある前田牧場の経営者と獣医さんを交えてお話しされている動画をアップされていて面白いので、お時間ある方はぜひご覧になってみてください。

今年も一年、いろんなことがありましたね。年末はいろんなことを振り返りながら過ごしたいと思います。皆さんも暖かくして、良いお年をお過ごしください。また2023年に、皆さんのメールボックスでお会いしましょう!

それでは今週も良い週末を。

編集長 Toshi

  

 

 

This Week in Coffee 
世界のコーヒーニュース

未来のカギは歴史の中に

先日、英国王立植物園キューガーデンのコーヒー研究者であるアーロン・デイビス博士が、アフリカで栽培されている2種類のリベリカ種についての研究を発表しました。アラビカ種、カネフォラ(ロブスタ)種と共にコーヒーの三大原種に数えられるリベリカ種には、元々別種として考えられていたエクセルサ種という亜種が存在します。本研究では、気候変動に直面する今日のコーヒー産業における、エクセルサ種の可能性について述べられています。

20世紀初頭の段階ではアラビカ種にならび世界的な注目を集めていたリベリカ種ですが、風味で劣るとされ、徐々にアラビカ種に覇権を譲ることとなりました。しかし強靱で収量も多く、熱や病害虫への高い耐性を誇ることから、気候変動によるコーヒー生産量の急落が危惧されるなか再び注目を集めています。また風味に関しても、リベリカ種はチェリーのサイズが大きいことから精製処理が適切に施されていなかったため、過小評価されていた可能性があると指摘されています。エクセルサ種に限っていえば、それぞれのチェリーが同時期に熟すことや、チェリーが葉のつく位置に集まることから収穫が容易で、アラビカ種に近いチェリーの特徴を持つため、精製もやりやすいという利点を兼ね備えていることが分かっています。

エクセルサ種の栽培が盛んなウガンダでは、現在200軒ほどの農園が同種を栽培しており、その数は増加傾向にあります。さらに同国では、農家主導でロブスタ種からエクセルサ種栽培への移行も積極的に行われており、一部ではエクセルサ種のみを栽培する農園もあるそう。今後さらにエクセルサ種の採用が進めば、より高品質なコーヒーの栽培地が広がると同時に、気候変動によって脅かされるコーヒー産地の維持に繋がると期待が高まります。

 

気になるニュース

▷  SCA豪州支部が、2023年度ナショナル・バリスタ・チャンピオンシップ、ブリュワーズ・カップの開催中止を発表来年6月開催予定の世界大会から逆算すると、国内大会の開催に向けて十分な準備期間がとれず苦渋の決断をしいられたとのこと。このため残念ながら2023年のWBCでは豪州代表の姿を見られないことになりそうです。

▷ 好きなドリンクをデカフェにできるティーバッグ式ツールがお茶やコーヒーに食用海藻エキスと天然ミネラル配合のビーズ入りバッグを浸けることで、12オンス (約360ml)の飲料のカフェインを最大80%除去できるそう。

▷ コーヒー研究財団(CSF)が、コーヒーの甘味に関する新たな研究プロジェクトを開始。Standart Japan第21号の「香りを味わう」でも触れた通り、コーヒーに感じる甘味は糖分によるものではないということが各種研究で明らかになりつつあります。本プロジェクトでは、そんなコーヒーミステリーを解き明かし、その知見を将来のコーヒー生産の改善に活用するそうです。

▷ 台湾のファミリーマートがUCCと提携し、台北市中山区にーヒー専門店をオープン予定。台湾産コーヒーや軽食の提供を予定しており、スパークリングやコーヒーカクテルをはじめ、コーヒーの種類は25種類に及ぶそうです。

▷ モダン仕様のトルココーヒーポット「OTTOがキックスターター上で資金調達に成功。2023年は、スペシャルティトルココーヒーが、グッと身近なものになるかも?

物足りないあなたへ

NBAプレーヤージミーバトラー率いる「ビックフェイス」がオニキスコーヒーラボとコラボデイリーコーヒーニュースが2022年コーヒービジネスニュースのまとめを公開2023年度ワールドバリスタチャンピオンシップでは、植物性ミルクブランド「アルプロバリスタ」がスポンサー予定、ついにWBCにプラントベースが登場?

 

 

What We're Drinking
今週のコーヒー

 

タリル珈琲 福岡地図

タリル珈琲ではコーヒー産地の作り手の想い、味わいに共感したコーヒーを日々焙煎し抽出します。 作り手がどの様に想いをこめて作ったコーヒーか伝えていきたいと考えています。 思わず美味しいっ!という感動を共有できたら、、 当店のコーヒーが満ち足りた日々を過ごすききっかけになることを願って。

 

生産者 Yerin Estel Sagastume Enamorado(イェリン・エステル・サガストゥメ・エナモラド)

生産地域ホンジュラス サンタ・バルバラ県エル ドラド(地図

品種パカス種

精製方法ウォッシュト&ソーキング

テイスティングノート
ブラックベリーやプルーンを思わす熟した果実感。黒糖やチョコレートのような甘さ。玉露のような甘美な余韻。口の中でとろけるようなまろやかな質感。明るい酸味とのバランスが心地いい

編集長のコメント:

今年最後のテイスティングです。カッピングの準備ができ、口にコーヒーを運ぶとスーッと口の中に広がったのは華やかで桃のようなフレーバー。ジューシーな洋梨のようなニュアンスもあり、滑らかでシルキーなテクスチャーが印象的です。角がないというか、口の中で丸い球体の液体を転がしているような感覚。ごくごく、するする、じゅわわ、じーん。そんなオノマトペが似合います。ほっこり優しい甘さは黒糖のようで、懐かしの黒棒の味をどこか感じさせてくれました。飲み疲れることがなく、気づけばおかわりしちゃうお茶のように何度でも飲みたいと思わせてくれるコーヒーです。おいしいなぁとニンマリ。ごちそうさまでした!

 


What's New in the Community?
Standart Communityで起きていること

 

今週のStandart Communityでは、来年のコミュニティ運営に向けて、購読者の方々を対象としたアンケートを開始しました。今年Standart Japanの新たな挑戦として立ち上がったコーヒーコミュニティ。Standartを、コーヒーを、そしてコーヒーが大好きな人々同士の交流を通じて、読者の方々のコーヒーライフがより豊かなものになってほしいとStandartメンバー一同強く願っています。来年度に向けて、みなさんのご回答お待ちしております!

※Standart Japan​定期購読者の皆さんにはCommunityへの招待状をメールでお送りしています。まだの方はぜひご参加ください!

 

Inspiration
おすすめの本、映画、音楽、アート

週末の酒がうまい、BRUTUSの聞くレシピ

突然ですが、僕は子どもの頃、通販番組を観るのが好きでした。錆びきった金の豚の貯金箱がピカピカに磨き上げられる姿や、大根さえ満足に切れない包丁を不思議なデバイスで磨くとトマトもスパスパ切れるようになる様子が、僕の目にはマジックのように映ったのです。当然僕は通販番組のターゲットでもなく、そもそも商品を欲しいと思ったこともなく、単にプレゼンターの軽快なトークと、手際の良さ、分かりやすい商品の効用をエンターテイメントとして楽しんでいました。

このポッドキャストにはその頃を思い出させる何かがありました。98年に生まれたクックパッドを筆頭に、インターネットには身近なものから行ったこともない国の料理まで、無数のレシピで溢れかえっています。そして以前は写真と文章からなっていたレシピは、その主戦場をYouTubeやTikTokに移したようにさえ映ります。分かりやすく、手短に、さらにはフードポルノ的な要素さえ組み込んだレシピ"コンテンツ"が増加の一途を辿るなか、先日たまたまSpotify上で見つけたこのポッドキャストには、レシピに大事な要素がまったく見当たりません。サムネイルにはかろうじてできあがった料理の写真が掲載されているもののスマートフォンの画面で確認するにはあまりに小さく、概要欄には材料や手順さえ掲載されていません。つまり実際にその料理を作りたければ、ポッドキャストをすべて聴くしかないのです(実はウェブサイト訪れると、きちんとレシピも調理中の写真も載っているのですが)。一方で料理中の音や、食材にまつわるストーリー、レシピを思いついた背景など、"どうでもいい"情報はたくさん詰まっていて、そのどうでもいいことが楽しい(これほど映像が頭に浮かぶポッドキャストは聴いたことがない)。料理に活用するためのレシピなのに、提示された音声自体を楽しんでしまう。これは幼少期の僕にとっての通販番組と同じなんですよね。多分僕はこのポッドキャストで紹介されているものを作ることはないでしょうが、きっとそれでも良いんだと思います。通販番組で売られていたあの洗剤やあの包丁研ぎが使うだけのものではなかったように、食は食べるだけのものではないんですから。

 

Brewing with…
あの人のコーヒーレシピ 

 

小野寺 美奈 aka みなっち、でらこ 

1993年岩手県奥州市出身。今年4月、岩手県花巻市石鳥谷町にMINARI COFFEE STANDをオープン。弁当屋だった空き店舗を改装し、ドライブスルー有りのコーヒースタンドを2人で営業しております。コーヒーはスタッフとしてお世話になったNagasawa COFFEEさんと自家焙煎のコーヒーを提供しています。

5 questions

今気になっている問いは?

「今日を大事に生きたか。」
1日の終わりに自分自身に問うようにしています。"今今と今いう間に今ぞ無く 今今という間に今ぞ過ぎゆく"という道歌が好きです。明日が来ることは奇跡で、"今"を生きたかった人がいて、今日出会った人は一生で一度の出会いかもしれず、私自身も明日生きているかわかりません。”今この瞬間”を大切に過ごしたいと思っています。コーヒーを淹れている時は、このコーヒーがお客様の”今”を明るく照らしてくれますように、と祈っており、感謝の言葉も大事にしています。

お気に入りの場所は?

「岩手県陸前高田市」
母の出身地で、小さい頃から頻繁に祖父母の家で過ごしており、毎年泳ぎに行った高田松原の海、昔ながらのおばあちゃんがいる駄菓子屋、夏はけんか七夕が毎年楽しみ(観てほしい‼︎)でした。ところが、東日本大震災で陸前高田市は8割水没、壊滅しました。その5日程前に「また来るねー!」と握手したのが祖父との最後の別れでした。今は復興が進み商業施設等もあり活気が戻りつつあります。過ごした思い出と昔の街並みはまだまだ記憶の中に鮮明に残っています。陸前高田市に行く度に、上記1の問いがしっかり自身に問われます。これからも大切な場所です。

 

譲れないこだわりは?

「方言や話し方」
自分ではわからないのですが、なまっているみたいです。東京にいた時もあるのですが、よく「どこ出身?」「なんて?」と聞かれることが頻繁にあり、都会なら理解できるのですが、岩手に戻った今でもなぜかよく言われます。直すようにすると、堅苦しくなるし言葉が出てこなくて楽しく会話できず日本語が狂います。そんな中”そのままでいいんだよ”って言ってくれた方に救われました。素のまま、ありのままでいると、お客様ともお互い朗らかに話せるので、私らしいこだわりなのかもしれません。

今誰と一緒にコーヒーを飲みたい?

「父」
いつもインスタントで飲んでいた父に、コーヒー淹れるよ!って言ってお店に招待したいです。豆の紹介をして挽くところから堂々と提供して、コーヒースタンドを始めるに至るまでの話をしたいです。普段、空から見られている気がすると、背筋がピンとなります!!

最近、何に感動した?

「2つの焙煎機」
お世話になったNagasawa COFFEEさんの初代使用されていたフジローヤルの焙煎機を譲っていただき、最近相方が自家焙煎をスタートさせました。焙煎したコーヒーを長澤さん夫婦がすぐに試飲をしてくれて、当時のエピソードも踏まえながらお話ししてくれて感動しました。そして、Nagasawa COFFEEさんで勤めていた頃、現在使用されているプロバットの焙煎機の仕組みのお話や、点火される瞬間が大好きでした。それが今は、自分たちのお店で相方がフジローヤルの仕組みを語り、点火をする瞬間を観ていて、とても感慨深い気持ちです。

 

Fancy a refill?
編集後記 

こうやって今年最後のニュースレターを配信することができ、ホッとしています。正直ホッとし過ぎて腑抜け状態。早速電車にも乗り間違えました。

今年で3年目に突入したこのニュースレター(2020年7月開始)ですが、過ぎてゆく時間が長くなるにつれ、読者の方々への感謝も日に日に大きくなるばかりです。いつも本当にありがとうございます🙏

来年もまた日曜日に、皆さんとメールボックスでお会いできるのを心より楽しみにしています。良いお年を〜🙋🏻

Takaya

 


今週の The Weekend Brew はいかがでしたか?

バックナンバーを含め、The Weekend Brewの感想やコメントはぜひ #standartjapan のハッシュタグと共にシェアをお願いします! 質問はメールでお待ちしております。またお友達やご家族など、The Weekend Brew を一緒に楽しんでもらえそうな方にこのメールを転送していただけると嬉しいです。

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今週の The Weekend Brew は Standart Japan 第22号スポンサーのCROWD ROASTER、パートナーの Victoria Arduino x トーエイ工業TYPICAETZINGER x BREWMATICPhilocoffeaのサポートでお届けしました。

LOVE & COFFEE✌️
Standart Japan
(執筆・編集:Takaya & Atsushi)